鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

5月の日記 カンチェリ 「Exil (エクシール)」 ウラディーミル・ユロフスキ・他

 今日のお天気は晴れ。

 庭の若葉たちが元気です。

 音楽CDのお話でも……

 先月の日記でご紹介したカンチェリがよかったので、あれから何枚かCDを取り寄せてみた。いまの気分でよく聴いているCDはこちら。

カンチェリ「Exil (エクシール)」

 ギア・カンチェリ Giya Kancheli 「Exil (エクシール)」の図(Exil はフランス語で「亡命」の意味です)。

 1. Psalm 23
 2. Einmal (Paul Celan)
 3. Zähle die Mandeln (Paul Celan)
 4. Psalm (Paul Celan)
 5. Exil (Hans Sahl)

 マーチャ・ドイブナー Maacha Deubner (ソプラノ)
 ウラディーミル・ユロフスキ Wladimir Jurowski (指揮)

 楽曲の分類としては声楽曲になるのかな? 詩篇第23章とパウル・ツェラン、ハンス・ザールの詩を歌った作品(マンフレート・アイヒャーに献呈)。レーベルはECM、1994年の録音。

 こんなところでツェランの詩に出会えるとは思わなかったな。ツェランは、わたしのお気に入りの詩人のひとりで、代表作「死のフーガ」をはじめて読んだときの驚きはいまもよく憶えている。ここでツェランの詩をとりあげると長~いお話になるので、興味を持たれた方はネットで検索などしてみて下さい。使われている詩の詳細を書いておきますね。

 パウル・ツェラン Paul Celan (1920-1970)
 ルーマニア生まれのドイツ系ユダヤ人の詩人。

第2曲 Einmal (Once いつか、一度)
 1967年に発表された詩集『Atemwende(息の転換、息の転回)』の最後に収められた詩。

第3曲 Zähle die Mandeln (Count the almonds アーモンドを数えよ)
 1952年に発表された詩集『Mohn und Gedächtnis(罌粟と記憶)』の最後に収められた詩。

第4曲 Psalm (賛歌、詩篇
 1963年に発表された詩集『Die Niemandsrose(誰でもないものの薔薇)』に収められた詩。ツェランの代表作であり、戦後のドイツ語圏の現代詩を代表する作品のひとつ。

 感覚的なことなので説明はむつかしいけれど、ここでのカンチェリは詩を音に還元して、言葉=人間を彼方の世界にむかって解放しているかのような印象を受けた。ECMのページを見てみると、礼拝がおこなわれていないときの宗教施設には特別な静寂があり、その静けさを音楽へと変換したい(内在させたい)みたいなことをカンチェリは語って、ああ、なるほど思った。

 言葉との苦闘は遠くにかすみ 静寂が世界にみちてゆく――
 詩を歌う――歌声が無に届く――

 5月はこんなところです。

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