鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

わたしはこの崖を登りたい

 数日前に見た夢のお話(第10話)。

 わたしは、とある駅のホームで女の子と並んで立っていた。こちらに向けられたひとなつこい笑顔。よくは分からないけれど、夢のなかのわたしは彼女と友だちらしい。

 それにしても奇妙に長細いホームだった。じっと眺めていると、不自然な遠近感で頭がくらくらしてくる。

 わたしたちはこのホームから、すぐ前に見えているとなりのホームに行きたいと思っていた。でも、その方法が分からない。いくら探しても、となりのホームへ行くための陸橋が見つからない。

 困ったな、とわたしが思っていると、その彼女が「いったん線路に降りて、むこうに渡りましょう」と、耳打ちしてきた。わたしには思いつかない大胆な発想! ちょっと危ないかなって思ったけれど、ほかに方法がなければ仕方ない。

 ホームから線路に降りようとするわたしたち。そして、ここからが苦難のはじまり。降りはじめた途端、駅のホームが急な崖に変貌した(いかにも夢らしい展開…)。

 えっ? ここはどこかの峡谷?

 それでも彼女と手を取り合って、岩がごつごつとした急な崖を、どうにか降りることが出来た。

 ふう……

 きらきらと夕陽を反射する線路を横断。

 次はこの崖を登らなきゃ。降りてきたときと同じように、彼女と協力して崖を登りはじめた。あたりまえのことだけど、降りるよりも登るときの方が何倍もたいへん。

 ほとんど体力の限界……

 先に崖を登り終えたのは彼女だった。ホームの上からわたしのために手を差し伸べてくれた。ありがとう。その手を必死につかもうとするわたし。でも、あと少しでその手に届かない。どうやっても届かない。

 そうこうしているうちに、その手がすっとわたしの視界から消えた。

 まって…… わたしをおいていかないで……

 わたしは見捨てられたんだ。直感的にそう思った。少し悲しかった。でも、仕方ないよね、人生ってこんなもの……

 気がつくと、わたしはホームの上に立っていた。どのようにしてあの崖を登り終えたのかは記憶にない。

 駅のホームから改札を抜けて、わたしは街に出た。どこか虚しい空の色。ここがわたしの暮らす街なのかな?

 埃っぽいアスファルトの道をてくてく歩いた。仕事帰りとおぼしき人影がちらほら。わたしはいまどこへむかって歩いているのだろう? そんなことを思いながら目が覚めた。

 

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