鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

ここは「アフターダーク」の世界?

 今日の気分まあまあ。

 寒さは普通。

 夢のお話(第16話)。

 今回の夢は、よく分からない夢。よく分からないながらも、村上春樹の小説『アフターダーク』の登場人物が、わたしの夢に出てきたとしか思えない不思議な夢。

 なので、ここはひとつ『アフターダーク』ぽい文章で書いてみよう(つまり過去形を使わない文章ってことだけれど…)。

―― † ――

 わたしはとある大学のなかにいる。広々とした敷地に、くすんだ灰色の建物がいくつも並んでいる。

 わたしの目の前にはひとりの男性がいて、わたしは彼と話をしている。彼はこの大学の学生らしい。彼の名前は、タカハシ・テツヤ。『アフターダーク』の登場人物のひとり。

 わたしは彼に昼食をおごる提案をしている。どうしてそのような提案をしているのかは不明。夢のなかのわたしは、もしかするとこの大学の卒業生なのかもしれない。彼はわたしの提案を受け入れてくれたようだ。

 わたしは彼とならんで歩きはじめる。学校の外はこれといって特徴のない平凡な住宅街。ここでわたしたちは二人の女性と合流する。タカハシ・テツヤがこの二人の女性を呼んだのだろうか? そのうちのひとりは、彼と顔なじみのようだ。彼女の名前は浅井マリ。『アフターダーク』の主人公。

 わたしは二人の女性と握手をして、挨拶をかわす。

 「はじめまして」

 浅井マリの手は思いのほか小さく、そして温かい。彼女のとなりに立つ女の子の話す言葉は日本語ではない。小柄なその子は中国語を話している。彼女の名前は郭冬莉(グオ・ドンリ)。彼女も『アフターダーク』の登場人物。

 わたしたちは食事をするためにレストランにむかう。てくてくと国道沿いを歩く。

 目的地に着く前に、寄り道をする。だれが言い出したというわけでもないのだけれど、お茶を飲みたくなったのだ。

 わたしたちはどこか見覚えのある建物、たぶんわたしがむかし通っていた中学校へと入ってゆく。校舎のなかでは、生徒や先生の声がとても響いて聞こえている。わたしたちは他の誰かに見つかるのではないかと、いくらかびくびくしている。

 校舎の廊下をすすみ、やがて給湯室にたどりつく。誰にも見つからなかったことに、わたしたち全員がほっとする。これで心おきなくお茶を入れ、飲むことが出来る。

 それにしても、おかしな給湯室だ。ステンレススティールの流し台、ガスコンロ、瞬間湯沸かし器、大きなヤカン。なじみのある光景のその奥に、どういうわけかベッドがひとつ置かれている。

 病院に置いてあるような、キャスターのついた白いベッド。その下には、薄黄色の液体の入った女性用のしびん(それは、わたしにつよい印象を与える…)。

 ベッドには誰も寝ていない。よじれた毛布、シーツのくぼみ。ほのかに体の温もりを感じさせるなまなましさが、先ほどまでここで寝ていた人物のことを想像させずにはおかない。

 浅井エリ。このベッドで誰かが寝ていたとするなら、彼女以外に考えられない。わたしは確信をもってそう思う。浅井エリは、浅井マリの姉。『アフターダーク』のなかでこんこんと眠り続けていた女性。

 彼女はいったいどこへ消えてしまったのだろう。小説と同じように、眠っているあいだに、あちらの世界に呑み込まれてしまったのだろうか? ここにいるわたしたちも、やがてはあちらの世界に呑み込まれてしまうのだろうか?

 分からない。わたしたちには、なにひとつ分からない…… わたしたちは黙ったまま、お茶をいれる準備をしている。

―― † ――

 小説の登場人物が出てきた夢を見たのは、初めてのような気がする。夢って不思議だね。

 

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