あなた どこから来たの?
今日のお天気は、明るい曇り空。
こちらの気分は、ほどほど。
ひさしぶりに夢のお話をしてみよう(第23話)。
たぶん真夜中すぎのこと、夢のなかのわたしはキッチンにいて、なにか温かな飲み物をいれようとしていた。
ミルクティーをいれようか、それとも甘いココアを少しだけつくろうかと思案していたとき、微かなもの音が聞こえた。
うん? なにかな? ダイニングのほうに視線をむけると……
あらら、子ぎつねがいるよ!
いっぴきのすらりとした子ぎつねが、ダイニングの椅子の下でなにやらごそごそしていた。黒くてつぶらな瞳、大きな尻尾が左右に揺れている。
かわいい……
子ぎつねに、そっと近づいてみた。わたしが近づいても、とくにおどろく様子もない。それにしても、どこから入ってきたのだろう?
あなた、どこから来たの?
わたしの足に、子ぎつねのやわらかな毛がふわりと触れた。温かで心地よい感触…… 素敵な毛並みをお持ちですね。そのまま、扉にむかって歩きはじめた。
もう帰るの?
わたしは子ぎつねのために扉を開けた。そうだよね、ここはあなたの家じゃないし、夜も遅いから、帰った方がいいよね…… 玄関へと歩いてゆく子ぎつね。
玄関の扉も開けた。
さようなら…… 子ぎつねは、すっと夜の闇のなかへ消えていった。
ほんの数十秒の短い夢だった。
- 次回 それは小さな家だった
- 前回 ガルシア=マルケスの不思議