12月の日記 ガルシア=マルケス 『グアバの香り』 レメディオスはなんの問題もなく上へ上へと上昇し続けた
今日のお天気は晴れ。
日中でも風が冷たくて寒いです。
たまには、お気に入りの書籍のお話でも。
ガブリエル・ガルシア=マルケス『グアバの香り』P・A・メンドーサとの対談、木村榮一訳(岩波書店)の図(本の保護のためにトレーシングペーパーのカバーをつけています)。
『グアバの香り』のことをずいぶんと気に入っている。この本に10代の頃、出会えていたらなあと思う。『グアバの香り』には創作に関係したいくつもの(興味深い)事柄が収められていて、ガルシア=マルケスのお話のひとつひとつに、わたしのこころは魅了される。
(もっとも大切に思う作家をひとりだけ選べといわれたら、わたしはガブリエル・ガルシア=マルケスを選びたい。ガルシア=マルケスは、わたしにとってそういう作家です…)
代表作『百年の孤独』でレメディオスが天に昇ってゆく描写について、ガルシア=マルケスは次のように語っている(要約してしまうと「おいしいところ」がなくなってしまう気がするのでガルシア=マルケスの語りをそのまま引用しますね)。
――以前あるところで、彼女を天に昇らせるのは楽じゃなかったと話したことがあったね。
そうなんだ、うまく天に昇ってくれなかった。どうしたらいいかわからなくて、絶望感に襲われてね、ある風のつよい日に、そのことを考えながら家の中から中庭に出たんだ。当時は、堂々たる体躯の素晴らしい黒人女性が洗濯しにきてくれていて、ロープに洗濯物を干そうとしていた。ところが、風が強くて、うまく干せなくてね。それを見ていてひらめいた。「よし、これで決まりだ」と考えたよ。美少女レメディオスが天上に昇るためにはシーツが必要だった。あの時は、現実がシーツを思いつかせてくれたんだ。ふたたびタイプライターの前に座ると、美少女レメディオスはなんの問題もなく上へ上へと上昇し続けた。そうなると、もう神様にも止められないんだ。
このようなお話を聞くと、わたしはうれしくなってしまう。「レメディオスは天に昇っていった」とだけ言葉を並べたのでは、なぜだめなのだろう? そのときシーツと(光をはらんだ)風が求められ、そこにアマランタがいて、ほとんど視力を失ったウルスラの眼差しが必要とされたのだろう?
「なぜ」という問いにわたしは答えることが出来ない…… そのときガブリエル・ガルシア=マルケスはレメディオスとの(永遠の)別れをそんなふうに描いてみせた。それが「物語る」ということなのだろう。
―― † ――
今年も残りわずか。大掃除を少しずつやってゆこう。あとはのんびりと年末をむかえたい。
12月はこんなところです。
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