真夜中の出来事だった
事故現場は駅近くの丁字路
白のセダンが電柱に衝突していた
薄い紙がするりと床に落ちる音を聞いた
どこからともなく物静かな救急隊がやって来た
整った隊列をつくると怪我人三名を素早く担架に乗せた
(なにも特別なことじゃない)
乱雑に布が掛けられた
ふたりの男とひとりの若い女
その運ばれてゆく先をわたしは知らない
女の担架がわたしの前を通りすぎようとしたとき
冷たい肌と肌が触れあうように舗道の隅で視線が交錯した
暗い街では誰もが他人ではありえない
とぎれとぎれの息は解けることのない固い結び目だった
#0117