希望の森の奥深く、翼竜の巨大な卵の殻でつくられた監獄。
独房には竹箒のような女がひとり、兎の骨で寒さをしのぐカーディガンを編んでいた。雨の日には正座をして看守の靴音を指折り数えるという。女の刑罰については、なにひとつ分からない。
ある日の午後、女は掌にミルクをこぼして未来を占った。明日は晴れのち曇り、そろそろ粉雪が舞うかもしれないよ。煤けた声で女は冬の到来を祝い歌う。
誰が彼女の幸せについて語るのだろう?
ある夜のこと、窓から流星のように銀の燭台が投げ込まれると悲しみは炎の海となって燃え上がり、監獄は壮麗に燃え尽きた。
#0119