観覧車
ある日の午後 遊園地に出かけた
お気に入りの観覧車に乗って街並みを眺めた
見下ろした街並みのなかを空想のわたしが歩いていた
古風な家々のあいだを抜ける細い路地の
胸が痛くなるような懐かしさを わたしは知っている
記憶は閉じている だからもうひとつの道を探そうとする
それは自由にむかってひらかれている
言葉が風景のなかをすり抜けていく
声は遠くまで届くことを望んでいる
でもすぐに行き先を見失ってしまう
空を見上げる
観覧車はゆっくりと回転している
記憶は記憶に回帰する
あなたはあなたに帰属している
#0131
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