どこまでも ゆっくりと歩く
朝 目が覚めたときのことだった
右足に違和感を覚えた
あれ?
パジャマのズボンをたくしあげてみた
右足の膝から下に包帯がくるくると巻かれている
いつ怪我をしてしまったのだろう 心当たりがない
おかしなこともあるものね
まだ夢のつづきを見ているのかな? そうなの?
現実と区別のつかない夢もあるという
包帯が巻かれた足を軽くさすってみた
どうやら痛みはないみたい 包帯をほどいてみようか
いや やめておこう
むかいの町工場で作業がはじまったらしい
ハンマーで金属を叩くような甲高い音が断続的に聞こえた
有刺鉄線のような打撃音にこころが縛られた
遠い記憶が思い出されるときの落ち着かない感覚
突然 深い悲しみが込みあげてきた
これが夢なら早く覚めてほしいものだと思う
思考がまとまらない
もしかしたら交通事故にでも遭ってしまったのかもしれない
でも いつどこで?
真実はすぐ近くにあるのだろう
近くにありすぎて わたしの視界から消えてしまう
からだの震えは何を伝えようとしているのだろう
#0136