長い廊下だった
長い廊下だった ゆっくりと歩こう
床は褐色のマーブル模様 ところどころ欠けている
黒く縁取られた小さな窓が等間隔にいくつも並んでいる
ときおり見かける扉は鍵が掛かっているのか開かない
空気は乾いていて靴音がよく響く
お昼すぎ 気さくな幽霊とすれ違う
壁の落書きに即興的な〈愛〉の文字を見つける
愉快 愉快 スキップしてみよう
疲れたら魔法瓶のミルクティを飲もう
短い夢を見る 生まれ故郷の潮の匂いがするよ
子供の頃は臆病な性格だった
夏の庭の小鳥たち すみれ色の上昇気流に乗って
飛んでゆけ 飛んでゆけ 目を細めていつまでも眺めていた
わたしのなかで完結する世界もある
ひとりの時間が好きなんだ さみしくはないよ
歩きつづけよう 言葉たちは夜を巡る
誰もが真実を語りたいと願っていた時代もあったね
いまはどんな時代? 遠雷 雨が降りはじめるのかな?
どうやらこの廊下には終わりがないらしい
矩形のなかの永遠 それもまた素晴らしい
#0161