名前を持たない小鳥たち
大理石の彫像が等間隔に並んでいた
古風なフレスコ画で装飾された高い天井の部屋だった
そこに名前を持たない小鳥たちが暮らしているという
さあ 自由に語ってごらんよ
北向きの窓からの光だった
きみたちの大切にしているものはなにですか?
こことは違った人生を空想したことはありますか?
情熱はいまも持っていますか?
ぼくはときどき物思いに耽ります
なにかを見つけたいんですね なにかを見つけることで
なにかを忘れたいのかもしれない
喪失から与えられるヴィジョンもあるというものです
小鳥たちはそれぞれの場所でくつろいでいる
青紫 深緑 灰色 茜色 やがて羽繕いをして丸くなる
ここでは皆がそろって同じ夢を見るという
石柱に寄りかかり ぼくにも眠りの時間が与えられる
蒼白い月光の夜だった
銀の器に水が溢れて宴のような水浴びがはじまった
ぼくも一羽の小鳥だったことに気がつかないわけにはいかない
見よう見まねで水に浸かり小さなからだをふるわせた
ぼくが小鳥たちの夢を見ているのだろうか
小鳥たちの見る夢がぼくだったのだろうか
#0163