ロイ・リキテンスタインの画集
ロイ・リキテンスタインの画集を探していた
でも見つからない おかしいなあ どこにいったのだろう?
もしかしたら…… 研究室の戸棚のことを思い出した
実験の待ち時間に読むための本を何冊も隠していた
本の入れ替えをしたときに紛れ込んでしまったのかもしれない
職場まで出かけることにした
交差点を渡ったところで突然の雨にみまわれた
こんな日もあるよね 濡れた服のまま地下鉄に乗った
わたしの勤める研究所は野球のグラウンドに隣接している
正面入口から本館を抜けて研究棟の二階に上がった
あれ 部屋を間違えたかな?
机の上の実験器具がきれいさっぱり消えていた
どうして? 研究室を移るのなら事前に話があるはずでしょ
戸棚を開けてみた 隠しておいた本はすべてなくなっていた
上司の悪戯だとしてもひどすぎる
廊下の隅で白衣の青年と立ち話をした
あちらの区画はずいぶんとむかしに閉鎖されましたよ
その説明に納得したわけではないけれどこれが現実なのだろう
照明が落とされて非常灯の赤い光が足もとを照らしていた
このまま長い廊下を歩きつづけるしかないのだろうか
終わりのない夢のようだね 途方に暮れた
誰だって自分の考えを持っている
ロイ・リキテンスタインについて語ってみたかった
その作品は様式の反復ではなくて純粋な芸術なんだ
画集を見てもらえば きみにも分かるはずだよ
#0201