冒険奇譚
I
丸い文字できみの名前が書き添えてある
詩の言葉だけがたのしみを与えてくれる
II
土の匂いのする納屋のなかにいた
手にしたメモには〈愛の昆虫〉の文字が躍っていた
これにつづく言葉を探すのがぼくの役割らしい
まかせてくれ! 冒険は得意なんだ
荒野と峡谷と原始の森を全速力で駆け巡った
獲得した両手いっぱいの言葉たち でもなにかが違っていた
なにが? ぼくの手のなかで言葉は固く息絶えていた
立ち止まることのない言葉だけが願いを叶えてくれるという
遅れて気がつくこともあるよね
砂時計の砂になった言葉が時を刻みはじめる
歪んだガラスの器 砂の窪みの中心にぼくがいた
#0209