2013-01-03 カモシカの夢 詩 雨期だった 空は灰色の雲に覆われていた降りしきる雨がけもの道を小川になって流れていた森はやがて巨大な湖へと変貌してしまうのだろうかある日 若いカモシカが低木の繁みに窓を見つけた 森に暮らすカモシカは窓の意味を知らないそれでも いくらかの好奇心はある (あなたにもある)窓はちょうどカモシカが通れるくらい開いていたただの気まぐれだとしても仕方のないことだろう 軽やかに窓をくぐり抜けた 近くの本箱が足場になった壁の窪みに前脚をかけた いくらか不安定な姿勢だった後脚のバネをいかして長机にジャンプした 蹄の音が響いた窓のむこうはありふれた日常の断崖絶壁だった #0214 次回 野生 前回 夕暮れと夜