雨降りの木曜日
雨降りの木曜日 明るい窓辺でノートに小さな図形を描く
お散歩するようにゆっくりラインを引こう いそがなくていい
ラインは弧とすれ違い右に短く折れ曲がる 傾斜を下る
眼差しが見つけたものを指先が追いかける 拾い上げようとする
一本のラインが〈かつて〉をなぞり〈いま〉へと帰ってくる
玄関の引き戸を開けた その奥からわたしを呼ぶ声が聞こえた
誰の声? 淡い闇だった 声には出さなかった (ただいま)
石英の結晶に入り込んでゆく細い光のラインに憧れている
#0228
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