中原中也 「思ひ出」
今日のお天気は晴れ。
でも、なんだか寒い。
風邪をひいてしまったのだろうか、喉が痛くて、やや不調。
いまの気分で、中原中也の詩を少しだけ……
わたしは中原中也のよい読者ではないなあ、とその詩集をぱらぱらと繰りながら思うことがある。なぜそのように思うのかは、このわたしにもよく分からないけれど……
角川文庫『中原中也詩集』から『在りし日の歌』「思ひ出」より(この詩で歌われているのは岬の端の煉瓦工場、長い詩なので好みのところを抜き出して引用)。
窓の硝子は陽をうけてても
ちつとも暖かそうではなかつた
春のはじめのお天気の日の
岬の端の煉瓦工場よ!
なんか、いいですねぇ~
でも、その煉瓦工場は「その後、廃れて」「死んでしまつた」そう。
嘗て煙を、吐いていた煙突も、
今はぶきみに、たゞ立つてゐる
雨の降る日は、殊にもぶきみ
晴れた日だとて、相当ぶきみ
あらま……
そんなにぶきみ、ぶきみと言わなくてもと思うけれど。この詩はつぎのように終えられる。
その眼怖くて、今日も僕は
浜へ出て来て、石に腰掛け
ぼんやり俯き、案じてゐれば
僕の胸さへ、波を打つのだ
ふうん、そうなのね……
わたしにとっての中原中也はこんな感じ。やはりわたしは、彼の詩のよい読者ではないなあ、と思う。
月夜の晩に、拾つたボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
「月夜の浜辺」より。