村上春樹 「風の歌を聴け」《3》
今日は朝から雨降り。
空気がもわっと湿っぽい。
村上春樹『風の歌を聴け』《2》からのつづき(1回目はこちら)。
雨降りの情景
『風の歌を聴け』を語る前に、ちょっと寄り道……
雨降りで思い出す村上春樹の作品はこちら。
『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』〈33〉から、レンタ・カーの代理店で「私」の対応をしてくれた「感じの良い若い女性」が、ボブ・ディランについて語るところ。
「そうじゃなくて声がとくべつなの」と彼女は言った。「まるで小さな子が窓に立って雨ふりをじっと見つめているような声なんです」
なんか、いいでしょ。
小説のなかの死者たち
『風の歌を聴け』〈1〉(文庫本で6ページちょっと) に出てくる、死んだ人の数をかぞえてみよう。
- デレク・ハートフィールド(飛び降り自殺)
- 叔父 a(病死)
- 叔父 b(自分の埋めた地雷を踏んで死亡)
- ケネディ大統領(暗殺)
- 祖母(死因は不明、享年79歳)
祖母がいつも言っていた言葉。「暗い心を持つものは暗い夢しか見ない。もっと暗い心は夢さえも見ない」
なんだか陰鬱としてくる…… 死者の数多いよ…… あの頃は、なんてことなく読んでたけれど、いま読み返すと、こころがつらくなってくる。
それでも僕はこんなふうに考えている。うまくいけばずっとその先に、何年か何十年か先に、救済された自分を発見することができるかもしれない、と。そしてその時、象は平原に還り僕はより美しい言葉で世界を語りはじめるだろう。
美しい言葉たち 美しすぎる言葉たち
希望のように
- 次回 「風の歌を聴け」《4》
- 前回 「風の歌を聴け」《2》