モンブラン144お掃除奇譚《8》 最終回
モンブラン144お掃除奇譚《7》からのつづき(1回目はこちら)。
愛についての断章
夕暮れどきの事務所。ソファーでくつろぐ花谷所長とW君。
「ねえ、W君。愛ってなにかかしら?」
「愛ですか? そうですね…… 愛って、ひとときのものではないですか。僕はそう思います」
「愛は、永遠であってほしいわ」
「『永遠』というのは、人には禁じられている言葉だそうですよ」
「それ、誰の言葉?」
「ホルヘ・ルイス・ボルヘスの小説にそう書いてありました」
愛用の万年筆を手に「愛は永遠ではない」とノートに書き込むマリ所長。
「ふたりの愛が、いずれ終わってしまうものなら、それはなにに引きつがれてゆくのかしらね……」
窓の外に白く舞っているのは粉雪だろうか。ふじ色の薄闇が足音を忍ばせ、すぐそこまで来ていた。時の経つのも忘れ、愛について語り合うマリ所長とW君であった。
(マリ所長はフィクションです…)
本編 8 わが愛しのモンブラン144
窓辺に144を置いて、記念撮影(紙は詩を書くときにいつも使っているコクヨの計算用紙です)。
我が愛しのモンブラン144の図。
わたしがモンブラン144で気に入ってるところを書いておこう。
- なんといっても軸の細さ。この優美な細さが好き。
- 小さなペン先の繊細な書き心地。
- キャップが嵌合式なので、軸にネジのギザギザがないところ。
- キャップをはめたときのパチンという軽やかな音。
- 小さいので携帯に便利なところ。
146ボルドーは、わたしの分身みたいなところがあるから、その存在を重く感じてしまうこともある。それにくらべると144は繊細で優しいこころをもった弟みたいな存在。そこには、軽やかな心地よさがある。
144で綴る文字は、野を駆けるバンビのように元気で明るい。わたしは、そのように感じている。
モンブラン144お掃除奇譚もこれで終わり。いくらかの名残惜しさをこの胸にいだきつつ……
それではみなさん、ごきげんよう……
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