モンブラン146お掃除奇譚《6》
モンブラン146お掃除奇譚《5》からのつづき(1回目と目次はこちら、このシリーズは全8回です)。
146ペン芯 構造と仕組み
今回は146のペン芯を詳しく見てみよう。Aが「表」でBが「裏」です。モンブランのプラスチック製ペン芯はつくりが複雑(144のペン芯はこちら)。
インクと空気の流れが分かりやすいように矢印を入れてみた。オレンジの矢印がインクで、青の矢印が空気。
インクと空気の流れは、おおよそこんな感じ……
インクはペン芯に刻まれた2本の溝を伝って(毛細管現象)、インクタンクからペン先のペンポイントにむかって流れます。空気の方は、ペン先のハート穴から入って、ペン芯のなかほどにあいている穴から裏に抜け、フィンのくぼみを通り(最後のフィンはくぼみがないかわりに、上の方が欠けている)インクタンクに入ります。
インクの流れる経路はシンプルだけれど、空気の流れの方はちょっとややこしい。これは、インクのぼた落ちなどを防ぐためと思われます(インク供給の自動調節機能)。つまり……
- ペンを手に持つとインクタンク内の温度が上昇して空気が膨張。
- 膨張した空気でインクがインクタンクから押し出される。
- そのインクをフィン(蛇腹)が吸収。
- フィンにインクが溜まると空気が流れにくくなる。
- 空気が入らないとインクタンクからインクも出なくなる。
- 筆記により、フィンに溜まったインクが消費される。
- フィンに溜まったインクが減ると、空気が通り始める。
- 筆記で消費したインクの分、空気が入ってゆく(通常の状態)。
みたいな感じだろうか…… (これは、わたしの推測です)(実際のインクと空気の関係はもっと複雑かもしれないとも思う…)
「表」と「裏」につづいて、Cの「横」とDの「ディテール」もどうぞ……
Dの「ディテール」から、インク溝の繊細さがお分かりいただけると思います(溝の幅は0.1~0.12ミリくらいかな?)。
ここに汚れが付着したり、変形して細くなると、インクの出がわるくなる。厚み0.1ミリほどの薄いフィルムで溝をさらって点検してみた。フィルムが溝の中をすっと通るので、とくに問題はなさそう(よかった…)。
Eは、インク溝に紙を差し込んでみたところ。
インク溝の深さを実感していただけると思います。
ブルーブラックの汚れについては、ペン先と同様、とくに汚れてはいないみたい。タヌキ毛の筆で丁寧に洗って、超音波洗浄器に数分間投入。ペン芯のお掃除は、これにて終了。
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