鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

村上春樹 「風の歌を聴け」《11》

 今日は、よいお天気。

 日差しはとても明るい。

 村上春樹『風の歌を聴け』《10》からのつづき(1回目はこちら)。

読書とスパゲティー

 『風の歌を聴け』〈12〉は、ラジオN・E・Bのディスクジョッキーから「僕」のところに電話がかかってくる。彼の質問に答えることができたら「特製のTシャツ」がプレゼントされるらしい。

 「僕」とディスクジョッキーの会話から。

 「(……)君は今何してた」
 「本を読んでいました」
 「チッチッチ、だめだよ、そりゃ。ラジオを聴かなきゃ駄目さ。本を読んだって孤独になるだけさ。そうだろ?」
 「ええ」
 「本なんてものはスパゲティーをゆでる間の時間つぶしにでも片手で読むもんさ。わかったかい?」

 ここで、わたしが注目したいのは「読書」と「スパゲティーをゆでる」ことの関係。

 エッセイ集『村上朝日堂の逆襲』から引用しよう。

 それからスパゲティー小説を3冊。(……)スパゲティー小説というのは僕の造語で、スパゲティーをゆでながら読むのに適した小説という意味である。もちろん見下して言っているわけではなくて、スパゲティーをゆでながらもつい手にとってしまう小説と解釈していただきたい。

 どうだろう、この関係、ちょっと面白いと思いませんか? ものは言いようってことかな。

 それで、わたしもこれやってみました、スパゲティー小説。

 わたしはパスタが好きだから、スパゲティーはよくゆでる。わたしがよく食べるのは1.5ミリの麺。これは5分でゆであがる。でもね、この5分をただ待っていればいいわけでもない。ほかにもいろいろとすることがある。

 わたしの場合、ソースにはレトルト(おもにトマトソースのもの)を使うのだけれど、それだけだとあまり美味しくない。なので、カリカリに焼いたベーコンとか、炒めた玉ねぎ&キノコ類なんかをトッピングして食べている。

 スパゲティーの美味しさには、手際がたいせつ。いろいろな作業が同時進行。麺をゆでつつ、レトルトのソースを温め、ベーコンを薄くスライスしてカリカリに焼く(あるいは玉ねぎ&キノコ類を炒める)。それとあわせて、飲み物のミルクもミルクパンに入れてほどよく加熱。お皿やフォークの準備。ランチョンマットをテーブルにひろげ、冷蔵庫から粉チーズ、ホットペッパーを出してそこに並べる。

 そうこうしているうちに、あらら、もう4分30秒…… ここで麺のゆで具合を確認。絶妙のアルデンテになったところで、ゆであがり。

 むむむ…… 本を手にする暇がないよ……

 わたしの結論。村上先生、スパゲティー小説、わたしにはムリでした。太めの麺だとゆでるのに10分くらいかかるので、少しは本を読めるかもしれないけれど……

 ちなみにここで、村上春樹がスパゲティー小説としてあげているのは

 クラムリー『ダンシング・ベア』
 リチャード・コンドン『男と女の名誉』
 マイケル・Z・リューイン『沈黙のセールスマン』

 の3冊です。

 スパゲティーのお話でした。

 

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