モンブラン144お掃除奇譚《4》
モンブラン144お掃除奇譚《3》からのつづき(1回目はこちら)。
間奏 2
深夜の事務所。お気に入りのソファーの上で、ネコのようにからだを丸くして眠るマリ所長。窓から入ってくるネオンの明かりが、彼女のシルエットを淡い闇の中に描きだしている。
ソファーについては万年筆と同じくらい、こだわりのあるマリ所長であった。それは、彼女が愛読してやまない作家、村上春樹の影響である。『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』から、その箇所を引用しておこう。
ソファーというものは犯すことのできない確固としたひとつの世界なのだ。しかしこれは良いソファーに座って育った人間にしかわからない。良い本を読んで育ったり、良い音楽を聴いて育ったったりするのと同じだ。
(……)
私は高級車を乗りまわしながら家には二級か三級のソファーしか置いていない人間を何人か知っている。こういう人間を私はあまり信用しない。高い車にはたしかにそれだけの価値はあるだろうが、それはただ単に高い車というだけのことである。金さえ払えば誰にだって買える。しかし、良いソファーを買うにはそれなりの見識と経験と哲学が必要なのだ。
1枚の毛布が、マリ所長の眠るソファーの下に落ちている。その毛布を拾い上げて、彼女にかけてくれるものはいない。彼女は孤独な女性であったが、それは彼女の愛する孤独でもあった。
(マリ所長はフィクションです…)
本編 4 144ペン先 シルエット
ペン先のかたちとスリット(切り割り)の様子がよく分かるように、裏から光をあててシルエットの写真を撮影してみた。
モンブラン144ペン先、シルエットの図。
前回の写真に引き続き、シルエットのフォルムもうつくしい……
EFのペン先って繊細。中央をすっと通るスリットの細い隙間が、わたしのこころを射抜く光の矢のようよ。
写真についての簡単なご説明。
ライトボックスの上に置いたペン先を撮影しました。ニコンのデジタルカメラとマクロレンズ(55ミリ)、三脚を使用。
写真にいれてある1ミリのスケールは、ここには写ってないけれど、いっしょに撮影した定規からのものなので、それなりに精確です。EFのペン先の繊細さがお分かりいただけると思います。
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