ふたりで高い塔の窓辺にいた
からだは窓から突き出たいっぽんの棒のようだった
あやうい均衡にこころがよろこんだ
(届くかなあ…… 届くかなあ……)
青空にむかって ひとしきり手を伸ばした
薔薇の香りがふたりのあいだをすり抜けていった
そのときつかもうとしていたものはなに?
(いつだって 未来は十分な量が用意されているのさ)
よく知っている彼女の笑い声だった
小さな〈生〉を交換してポケットに隠した
(きみがわたしのことを語るのさ きっとそうなのさ)
そうなの? だったら悲しいな
でも愉快だね これは子供の遊びなんだ
すぐそこに 見えるはずのない自由が見えていた
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