鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

安部公房

安部公房 「箱男」《番外編3》 ウィキペディア 「箱男」 ノート みしまるももについて

安部公房『箱男』《番外編2》からのつづき(本編はこちら)。 ひさしぶりにウィキペディア「箱男」を見てみたところ、全面的に書き直されていました。ざっと読んだところでは、わたしの『箱男』シリーズに関係した箇所(剽窃)は修正されているようです(わ…

安部公房 「箱男」《番外編2》 コメント依頼 みしまるももについて

安部公房『箱男』《番外編1》からのつづき(本編はこちら)。 最近、Wikipedia: コメント依頼/みしまるもも_20140528 から、こちらのブログにいくらかのアクセスがあるようです。調べてみると、わたしの「箱男」《番外編1》が取り上げられ(取り上げて下さ…

安部公房 「箱男」《番外編1》 ウィキペディア 「箱男」 みしまるもも 編集について

『箱男』シリーズの番外編1(本編はこちら)。 ウィキペディア「箱男」の内容にはいくらか問題があると感じたので少し語ってみたい(本来は、ウィキペディアの方で語るべきなのだろうけど、不快な思いをしそうなので、ひとまずこちらのブログに書きます)。…

安部公房 「鞄」《13》 鞄の変遷

安部公房『鞄』《12》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 鞄の変遷について語ってみよう。 不思議な鞄は安部公房のお気に入り 『鞄』は『波』(新潮社の読書情報誌)に「周辺飛行」シリーズ(詳細は《7》を参照)に発表されて以降、改稿されて単行本『笑…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《9》 リルケ ダンテ ギリシャ神話

安部公房『デンドロカカリヤ』《8》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 『デンドロカカリヤ』とリルケとの関係をさらに見てゆこう。 オルフォイスに寄せるソネット 第二部〈12〉第1連 書肆ユリイカ版では削…

安部公房 「鞄」《12》 鞄と共に歩む創作

安部公房『鞄』《11》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 『鞄』の物語は創作のプロセスに似ていないだろうか。ふと、そのことに気がついたとき『鞄』とわたしの関係がおおきくかわった(そのときの読書体験は《6》を参照)。 これまでも『鞄』と創作の…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《8》 リルケ「ドゥイノの悲歌」

安部公房『デンドロカカリヤ』《7》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 《序2》で「コモン君の物語」に透けて見えるリルケとの関係から『デンドロカカリヤ』シリーズを展開してみたいと語った。これからじり…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《7》 コモン君の世界

安部公房『デンドロカカリヤ』《6》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 植物に変形したコモン君の世界をさらに見てゆこう。 コモン君は自己の内面に閉じこもっているのだろうか? 『デンドロカカリヤ』シリ…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《6》 裏返った顔の世界

安部公房『デンドロカカリヤ』《5》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 植物に変形したコモン君の世界はどのようになっているのだろう。 わたしたちの世界 雑誌『表現』版では、顔が裏返り植物に変形すると…

安部公房 「鞄」《11》 失踪者の眼差しとクレオール

安部公房『鞄』《10》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 『鞄』と『燃えつきた地図』について自由に語ってみよう。 失踪者の眼差し 『鞄』と『燃えつきた地図』は物語の構造がよく似ている。どちらの主人公も当初の目的を達成すること(『鞄』では事務…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《5》 変形の過程

安部公房『デンドロカカリヤ』《4》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 コモン君が人間から植物に変形する過程を見てゆこう。 植物への変形の過程(詳細編) 初出の雑誌『表現』版では、コモン君が植物へ変…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《4》 顔の役割

安部公房『デンドロカカリヤ』《3》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 コモン君が人間から植物に変形するとき顔が裏返る。ということは、顔の反転は人間―植物への変形のスイッチということらしい…… 『デン…

安部公房 「鞄」《10》 都市と開かれた無限

安部公房『鞄』《9》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 『燃えつきた地図』について(ちょっと寄り道気分で)語ってみよう。 地図の消失 『燃えつきた地図』は、主人公の「ぼく」が興信所の雇われ探偵として人生をおくるなかで育ててきたの自分の地図が…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《3》 概要 初期著作群

安部公房『デンドロカカリヤ』《2》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物とあらすじは《2》に書いてあります)。 『デンドロカカリヤ』との関連で、わたしが語る予定にしている初期著作群(主なもの)をひととおりまとめておこう(暫定です…)。 こ…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《2》 登場人物とあらすじ

安部公房『デンドロカカリヤ』《1》からのつづき。 『デンドロカカリヤ』の登場人物とあらすじについて語ってみよう。 (『デンドロカカリヤ』には、初出の雑誌『表現』版―1949年と後におおきく改稿された書肆ユリイカ版―1952年のふたつのヴァージョンがあり…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《1》 コモン君のこと

安部公房『デンドロカカリヤ』《序3》からのつづき。 『デンドロカカリヤ』について語ってみよう(本編)。 目次 このシリーズ(全20回くらいを予定)は、安部公房の初期を代表する短編小説『デンドロカカリヤ』(新潮文庫『水中都市・デンドロカカリヤ』に…

安部公房 「鞄」《9》 続・変奏

安部公房『鞄』《8》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 もうひとつの『鞄』の物語から見えてきたものについて語ってみよう。 そのひとが求めていたもの 《8》で語った物語の他に、それと似たような展開の物語をいくつかつくってみた。そこから分かって…

安部公房 「鞄」《8》 変奏

安部公房『鞄』《7》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 『鞄』の物語をお手本にして、新しい物語をつくってみよう。 簡単なようで むつかしい… 『鞄』の物語から新しい物語を派生させるのは簡単なようで、むつかしい。『鞄』を構成している要素(設定)…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《序3》 方向感覚

安部公房『デンドロカカリヤ』《序2》からのつづき(本編はこちら)。 準備原稿その3、作家の方向感覚について。 内容と様式 村上春樹のエッセイ集『村上朝日堂』から、文章を書くことの方向感覚について語られたところを引用しよう。 ここでの村上春樹は「…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《序2》 リルケ

安部公房『デンドロカカリヤ』《序1》からのつづき(本編はこちら)。 準備原稿その2、リルケと青年安部公房。 入口の模索 『デンドロカカリヤ』シリーズは、どこを入口にして書きはじめるのがよいだろう。漠然とした予感はあるけれど、さあ書こうというほど…

安部公房 「鞄」《7》 作品の背景と作家の閃き

安部公房『鞄』《6》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 作品の書かれた背景から『鞄』について考えてみよう。 『鞄』はエッセイ? 意外に思われるかもしれないけれど、『安部公房全集』の分類では『鞄』は「小説」ではなく「エッセイ」のカテゴリーに入…

安部公房 「デンドロカカリヤ」《序1》 深い霧を切り抜けてゆくように

今日のお天気は晴れ。 9月になっても、まだまだ暑い。 安部公房作品、新シリーズのための準備原稿(本編はこちら)。 次に取り組む作品は… 8/28の日記に、安部公房『密会』シリーズの次にやりたい作品(その候補)について語った。決定というわけではないの…

安部公房 「鞄」《6》 ひとの心理

安部公房『鞄』《5》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 《5》を投稿したのが6/7なので、あれからずいぶんと時間が経ってしまった…… ひとの心理の変化について語ってみよう。 ひとの心理はかわってゆく 《5》では「私」のこころの「不自由」と「自由」の…

安部公房 「密会」《16》 読書と想像力

安部公房『密会』《15》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物は《2》に、あらすじは《3》に書いてあります)。 わたしにとっての『密会』を語ろう。 長い時間のなかから見えてくるもの 『密会』《1》「地獄への旅行案内」を投稿したのは昨年の9月だ…

安部公房 「密会」《15》 続・溶骨症の娘

安部公房『密会』《14》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物は《2》に、あらすじは《3》に書いてあります)。 ふたたび溶骨症の娘について語ってみよう。 おつかれさま… 『密会』は「(……)明日の新聞に先を越され、ぼくは明日という過去の中で、何…

安部公房 「鞄」《5》 自由と不自由の境界

安部公房『鞄』《4》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 「私」の心理について考えてゆこう。 自由と不自由の境界 前回、鞄を持って事務所を出かけた「私」の心理が不自由([2-2]事務所に戻れない)から自由([2-3]鞄に導かれている)へと変化してい…

安部公房 「鞄」《4》 構成から見えてくるもの

安部公房『鞄』《3》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 『鞄』の構成について語ってみよう。 『鞄』の構成はどのようになっているだろう? 『鞄』は短い作品なので、その構成もシンプルなものになっている。この物語は大きくふたつに分けることが出来る…

安部公房 「鞄」《3》 どのように問うか

安部公房『鞄』《2》からのつづき(1回目と目次はこちら)。 『鞄』は教科書に採用されているということもあって、この『鞄』シリーズにもGoogleなどの検索からたくさんのアクセスがある。皆さんは、なにを求めてこちらにいらっしゃるのだろう? この物語に…

安部公房 「密会」《14》 愛や希望にむかって

安部公房『密会』《13》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物は《2》に、あらすじは《3》に書いてあります)。 『密会』の結末について語ってみよう。 死につづけること 『密会』をはじめて読んだあの頃も、このいまも、物語の結末についてあれこれ…

安部公房 「密会」《13》 溶骨症の娘

安部公房『密会』《12》からのつづき(1回目と目次はこちら、登場人物は《2》に、あらすじは《3》に書いてあります)。 溶骨症の娘について語ってみよう。 彼女は軟骨外科病棟に入院している 溶骨症の娘は軟骨外科病棟の二階、八号室に入院している。軟骨外…

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