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鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

語りたいのだ

粗い言葉の格子のむこうに咲きほこる睡蓮の幻を見た子供たちは精神の瀬戸際をダンスのステップですすむ わたしは語りたいと思うのだなにかが押し寄せ なにかが引いてゆく さんざめく交感をただ それだけのために語りたいのだ #0182 次回 名前をもたない子供…

明晰な言葉が

明晰な言葉が好きだった朝露のひと滴ひと滴にに掛け替えのない世界を見つけるたくさんの小さな窓があった 窓辺で遊ぶ子供たちがいた 明晰な言葉の糸が深い谷からイメージを届けてくれる昨日まではざらざらと模倣された夜の世界に暮らしていた幸せは見つける…

レポート 2012A

午前中 自主勉強のレポートに取り組む床にモップをかける 書類棚の整理 予定表の確認ちょっと出かけてきますね なじみの雑貨屋のソファで居眠りをしていたらいつのまにかグリーンのカーディガンを着せられていたこれ 買うつもりはないんだけれど……そろそろ事…

歌われた世紀

世紀は暗い森の上空を旋回するジュラルミンの翼だった未来は捩れながら成長してゆくコンクリートの夢だった都市の死角から沸きたつ声を探偵はノートに書きとめるいま ぼくたちの愛が境界を越えてゆく #0179 次回 レポート 2012A 前回 憂鬱の小石

憂鬱の小石

窓の外は薄曇り 時折粉雪がちらちら微かな吐き気と軽い頭痛 気分は沈みがち 意識の確かさを計るために意識を記述する自由の確かさを計るために自由を記述する (疑い深いこころは不安を招く) 小石の重みについて(彼は)思考する小石の重みが思考するのを(…

グラスの時間

水で満たしたグラスの縁を中指でなぞってみる淡い光の輪と淡い影の輪がふるえて交錯するよほら 面白いでしょ 時間の水切り遊びなんだ眼差しは絶えず見えることの一秒先へとすすんでゆくからまだ なにもはじまっていない空白に愛が透けて見えるよ #0177 次回 …

旅行に出かけた

旅行に出かけた電車を乗り継いで ひなびた温泉宿に泊まる畳はいいよね ころりと寝転んで ひと休みちょっと眠いな このまま眠ってしまおうか目を閉じた おやすみなさい……と思ったら なにやら不穏な気配が 薄目を開けた窓の微妙に歪んだガラス越しに冬の空を眺…

深く 潜航せよ

深く 潜航せよ―― ぼくは きみの言葉をみつける 深く 潜航せよ―――― ぼくは きみのこころをみつける 深く 潜航せよ―――――― ぼくは きみと世界の絆をたしかめる (文学のための標語) #0175 次回 旅行に出かけた 前回 言葉って

言葉って

言葉って ひとの思考の総体でしょそれが見えすぎて怖くなるときがあるよね (みんなは平気なのかな 気にならない?) きらきらと砕けた方解石のように夢の底に沈んでゆく有機的な結び目を失い和声のように言葉が漂っていた #0174 次回 深く 潜航せよ 前回 先…

先生のこと 2

古風な洋館に招かれて先生とワルツを踊る夢を見るふわふわとした浮遊感 これ以上のしあわせがあるだろうかでも なんだか悲しいな どうしてだろうね?こんなときは散歩に出かけよう 落葉の小径を歩こう 昨日 みなさんにお話ししたような心理劇は苦手ですよ解…

仮初めの物語たち

仮初めの物語たち 未来の廃墟の臨海工業地帯から空をゆく鳥たちの眼差しを空想してみる見失った時代の残酷にも淡く細い光が降り注いでいた渦を巻く雲のむこうには きっとまぶしい太陽があるだろう巨大な群れとなって鳥たちは舞い上がってゆく (こんなふうに…

20世紀絵画

夕暮れには悪意も善意もないというそれでも細い路地を通り抜けるときは注意した方がよい不運にも陰惨な殺人事件の噂話を聞くこともある憎悪と破局の孤独な靴音が思いがけず不安や恐怖や絶望を呼び覚ますかもしれない エドヴァルド・ムンクの叫びではなくてぼ…

夢の記述

ふとしたきっかけで 怖い夢を見ることもある明け方ちかく 幻のような美しい夢を見ることもある永遠の道のりも 夢のなかでは三歩でゆけるだろうきみの明日に追いつくために ぼくは繰り返し夢を見る #0170 次回 20世紀絵画 前回 先生のこと

先生のこと

冬の夜の校庭で からだを反らして考えるきみたち むつかしい言葉はお嫌いですか? 茂みに隠れた小鳥は探さなくていいですよやがて理解できるとは思わない方がよいでしょう小鳥は小鳥の森に棲んでいて自由なのですから (小鳥は永遠の正しさの森に棲んでいる…

夜のゆるやかな坂道で

夜のゆるやかな坂道で立ち止まる遠くには昇る満月と銀の海 少し待ってみよう言葉たちが ひしめきあって闇に溶けてゆく #0168 次回 先生のこと 前回 誰もが空を見あげていた

誰もが空を見あげていた

誰もが空を見上げていたいつの頃のお話? いわし雲が好き!声はありのまま遠くへ届こうとするぼくたちが歌う きみは歌わないきみの上空で愛が逆立ちをする季節は巡ってゆく 月光とひつじ雲ぼくたちは歌わない きみが歌う #0167 次回 夜のゆるやかな坂道で 前…

ひとりでいることの場所には

ひとりでいることの場所にはいつでも帰ってゆけるぼくたちは おおきな世界のもうひとつの小さな部分だ愛を探して旅をする夜の鳥の歌をまねてみる #0166 次回 誰もが空を見あげていた 前回 きみの眠りのなかで

きみの眠りのなかで

きみの不眠のなかで ぼくたちが夢を見るぼくたちは なにをそんなに怯えているのだろう悪夢の迷宮にも死角がある 通路のくぼみに隠れていよう見つかってしまうから声は出さないでね #0165 次回 ひとりでいることの場所には 前回 花と葬送

花と葬送

ねぇきみたち 花を見にゆこうよ街路には長い葬送の列 いつまでも途切れることがない家々の窓に映された薄闇の既視感 盲目の言葉たち誰にも気づかれることなく消えていった夢の物語たちぼくたちは遅く咲いた薔薇を追いかける #0164 次回 きみの眠りのなかで …

名前を持たない小鳥たち

大理石の彫像が等間隔に並んでいた古風なフレスコ画で装飾された高い天井の部屋だったそこに名前を持たない小鳥たちが暮らしているというさあ 自由に語ってごらんよ 北向きの窓からの光だったきみたちの大切にしているものはなにですか?こことは違った人生…

空想と小鳩

空想が遊園地で遊ぶ小鳩たちを一列に並べると小鳩たちは空想をついばみ空にした #0162 次回 名前を持たない小鳥たち 前回 長い廊下だった

長い廊下だった

長い廊下だった ゆっくりと歩こう床は褐色のマーブル模様 ところどころ欠けている黒く縁取られた小さな窓が等間隔にいくつも並んでいるときおり見かける扉は鍵が掛かっているのか開かない空気は乾いていて靴音がよく響く お昼すぎ 気さくな幽霊とすれ違う壁…

ある日の言葉たち

不信の言葉たち とぎれとぎれの淡い夢を見る空想の言葉たち いくつもの情景を越えてゆく #0160 次回 長い廊下だった 前回 文学のランチ

文学のランチ

文学のランチ 丸いテーブルが規則正しく並んでいたいつもの仲間と席についてメニューを開いた 温野菜のサラダ ホットケーキ ミルクティーわたしたちの語らいは水槽で泳ぐ熱帯魚の群れのようだった水草の密林と戯れ 小さな美意識の尾ひれがゆれたいつのこと?…

夏の光

夏の光のなかで きみたちが愛の物語を摘むいくつもの明るさから この世界はつくられているんだよ空想の未来のイメージが木々たちのあいだを通り抜けていったたくさんの蝉の声 ぼくは縁側でお昼寝をする #0158 次回 文学のランチ 前回 わたしという器が傾くと

わたしという器が傾くと

わたしという器が傾くと情景がこぼれる駅に向かっていると思っていたのに あれ? おかしいな踏切を渡った先は運河にさえぎられて それ以上すすめないいま来た道を引き返した あれれ? 知らない場所だった夏草が生い茂る空地に家族全員で立っていた わたしと…

街の外れの市立図書館 分館

駅から線路沿いに歩く すり鉢状の窪地を下りてゆこういっけん雑居ビルふうの外観 ここ市立図書館の分館なんだよ知ってた? 意外と知らないひともおおいんじゃないかな?よく故障するエレベーターは遠慮して階段を使おう五階の談話室Aが わたしのお気に入り…

帰郷

境界を越えてゆく思いがけない帰郷だったようやく雨があがった ホテルから街に出かけた商店街は乱雑に切り貼りされたブリキのコラージュだった文房具店の陳列棚に煤をまぶしたような〈時〉が並んでいた夢の入口で戸惑う子供のように古書店の角を曲がったホテ…

鉄道高架橋

ふと立ち止まったのは鉄道高架橋の下だった通りすぎた列車の残響のなかに誰かの叫び声を聞いた気がしたコンクリートの巨大な柱はなにを支えようとしているのだろう?気がつかないまま〈生〉を共有している見知らぬ友人たちがいた記憶の鮮やかさが いまを遠く…

映画の時間

夜も遅い時間だった川沿いの道を彼女と歩いたこっちの橋を渡ろう 足もと気をつけてねとある民家の前で宇宙服を着た老人を偶然目撃気味悪いな 泥棒じゃないよね泥棒はあんな目立つ格好しないと思う 趣味でしょ打ち合わせ場所は廃駅の待合室天井に裸電球がぽつ…

六月の幻影

近未来を思わせるホテルのロビーでは著名な老作家がひとり ソファーでくつろいでいた近くを通りすぎたとき薔薇と古書の匂いがした ガラスとアルミと大理石でつくられていた世界は消えて青空と葡萄畑のなかに白いシャツを着た少年の姿があったその喜びにも似…

夜のこと

夜の小箱に幽閉された浅い眠り指先が闇をなぞると記憶の車輪が回転をはじめるかた かた かた これはいつか見た光景?三日月の形をした岸辺で生命の真珠を拾う #0151 次回 六月の幻影 前回 サヨナキドリ(小夜啼鳥)

サヨナキドリ(小夜啼鳥)

夢で見た故郷に帰りたいな眼差しはサヨナキドリの翼となって夜の街路を巡る恋人たちはガス燈のもとで純粋な愛を語りあっている散り散りになった月の孤独が運河の闇に遊んでいるいつまでも飽きることなく世界を眺めていたいな人生と物語はひとしく同じものだ…

午後の散歩 海コース

よく晴れた日の午後 散歩に出かけたゆるやかにカーブした川沿いの道を歩こう踏切を越えると潮の香りがするよ海 ひさしぶりですねぇ海 いいですねぇ 防波堤によりかかり遠くを眺める水平線は少しぼんやりとして見える太陽に温められた浜辺を歩きいつしか夢の…

カフカの森の機械

カフカの森にあるという不思議な機械それにしても奇妙な形だね これ 動くの?わたしの質問に技師は笑顔で肯いた ごとごとごと くぉんくぉん かたかたかたなんの前触れもなしに機械が動きはじめた すごい!危なくないの? でも 好奇心もあるよ ぎぃぎぃぎぃ …

真珠が転がる日

水曜日のお天気は 朝から雨降り雨 よく降るなぁ 空気がひんやり湿っぽい お昼すぎ 窓辺でくつろいでいたときのことふとしたきっかけで手のひらを転がりはじめる真珠たちころん ころろん ころころくるん ららら奇術師の華麗な手さばきでイメージと戯れてみた…

わたしが語るとき

三日月 真夜中の愉快なピクニック不思議 窓辺に菫を運んでくる小鳥行進曲 白いベレー帽の少年とすれ違う日曜日 熱狂する惑星の夢を見る あの日の出来事をいつか誰かに語りたいな声は平原と青空の彼方に届こうとする #0146 次回 真珠が転がる日 前回 ノート …

ノート 推理編

教室では いつもなにかしら怪奇な事件が起きているという探偵は不在 生徒や先生も事件にはさして興味がないらしい これって もっとよく調べた方がいいと思うんだそうかなぁ いつものことでしょ わたしは気にしないな 放課後 クラスメイトに聞いた話をノート…

わたしという樹に葉が茂る

わたしという樹に葉が茂る 眺めはどこまでも明るい太陽を愛した言葉たちと淡い緑のアーチを抜けてゆく #0144 次回 ノート 推理編 前回 青空の情景

青空の情景

木々たちはなにも探してはいないときおり空想的で いくらか哲学的な話し方をする世界を巡る姿は誰にも見つけることが出来ないというここに青空の情景がある 静かな生の暮らしがある #0143 次回 わたしという樹に葉が茂る 前回 夜と虹

夜と虹

遠くに見えた記憶は飛行機雲の軌跡だった眠りの入口で屈折した光が未来への旅を教えてくれたどれほどの愛が夜と虹を巡るのだろう #0142 次回 青空の情景 前回 午後の窓辺

午後の窓辺

午後のテラスで友人に愛の言葉を耳打ちされたつかのま 小さな言葉は青空の大きさになった渡り鳥たちは野辺で美しい生活を夢見ている #0141 次回 夜と虹 前回 VANILLA WALTZ

VANILLA WALTZ

チャイムが鳴って授業が終わった明日の時間割をノートの余白に書き写しておこうあれ? 授業は昼食をはさんで体育ばかり 他の科目は?この学校のこと はじめから好きじゃなかった 外は雨降り 窓から校庭を見下ろした傘を差したまま ふたり人乗りの自転車で下…

レインコート

夕暮れの細い道を歩いていた闇に沈みかけた家は大きな木々に囲まれていた (帰ってきた 帰ってきた) こころが渦を巻いた 玄関の引き戸を開けたただいま 暗がりの奥から ぱたぱたぱたと足音が聞こえてきたレインコートを着た姉の姿が見えた夜には雨が降るの…

静かな時間

静かな時間のなかで考える美しいもの たくさん大切なものたち 丸みに包まれて森の翳りのなかに姿を隠す子供たちは皆 押し黙っている #0138 次回 レインコート 前回 鞄のこと

鞄のこと

わたしとしたことがどうしたことだろう大切な鞄をホテルの部屋に忘れてきてしまったあわてて いま来た道をひき返した 三〇三号室に泊まっていたMですけどそちらに鞄を置き忘れたみたいなんですねこれくらいの大きさのですね はい……小さなガラスのくまさんが…

どこまでも ゆっくりと歩く

朝 目が覚めたときのことだった右足に違和感を覚えたあれ? パジャマのズボンをたくしあげてみた右足の膝から下に包帯がくるくると巻かれているいつ怪我をしてしまったのだろう 心当たりがない おかしなこともあるものねまだ夢のつづきを見ているのかな? そ…

1/6チーズケーキ

真夜中のキッチンの片隅で1/6チーズケーキが 5/6チーズケーキの夢を見る求めていたものたくさん ひとつずつ満たされてゆくなるほど 1/6+5/6→6/6 ということですね6/6チーズケーキには まったく隙がないつまり 60゚×6→360゚ 完全な円は美しいすっと起き上がり …

遠くから きみの名前を呼ぶ

鏡のような湖面に漕ぎ出す白い小舟ふたりの女の子がむかいあって乗っているひとりはすらりと背が高い もうひとりは丸顔オールを漕いでいるのは丸顔の女の子鮮やかに映された青空のなかをすすすとすすんでゆくやがてゆっくりと左右に揺れはじめるすらりとした…

遅れてやってきた小鳥

遅れてやってきた小鳥が落葉のうえで遊ぶ人々の営みのあるところに水蒸気が立ち昇るあの歌声は誰の願いを伝えようとしているのだろうやがて忘却の未来の夕暮れに帰ってゆく #0133 次回 遠くから きみの名前を呼ぶ 前回 物語について

鞠十月堂