ドストエフスキー 「悪霊」《1》 ポリフォニー
今日のお天気は晴れ。
気温は低くて、とても寒い。
ドストエフスキー『悪霊』(江川卓訳 新潮社文庫)は、第1部 第4章の途中まで読みすすめた。
今回は、ノートをとりながらのゆっくりとした読書。気に入ったところや、そのときどきで思ったことを書きとめている。これをやると読書の流れが途切れたりもするけれど、それはあまり気にならない(散歩と同じで、ゆっくりとした歩みのなかで楽しみたいな…)。
このお話は登場人物がおおくて、互いの関係も複雑。いろいろと書き込んでいるノートはそちらの確認でも役に立っている(登場人物たちの名前や性格、その背景など、いちどには憶えきれない)。
目次
このシリーズ(全7回)は『悪霊』を読みながら、ほぼリアルタイムで記事を書いていったものです。
- ポリフォニー……『悪霊』ポリフォニーの世界(このページ)。
- 真実と永遠……村上春樹の小説からも引用します。
- 登場人物たち……わたしの好きな登場人物たちのご紹介。
- 語り得ない言葉……「スタヴローギンの告白」についての考察。
- ステパン氏差押え……いつのまにか読書がスローペースに。
- 第3部 第1~3章……主要な登場人物たちについて語ります。
- 第3部 第6~8章……主要な登場人物たちについて語ります。
『悪霊』 ポリフォニーの世界
ノートに書き写した一部をこちらにも書いておこう。第1部 第3章「他人の不始末」から、私(アントン・ラヴレンチエヴィチ)とキリーロフ氏の会話。
私 「人間が死を恐れるのは、生を愛するからだ、ぼくはそう理解しているし、それが自然の命ずるところでもあるわけですよ」
キリーロフ氏 「生は苦痛です。生は恐怖です。だから人間は不幸なんです。いまは苦痛と恐怖ばかりですよ。いま人間が生を愛するのは、苦痛と恐怖を愛するからなんです。(……)」
さらに、第1部 第4章から、そのキリーロフ氏を話題にした、私とシャートフの会話。
シャートフ 「あの連中にあるのは、(……)体質にまでなってしまった憎悪ですよ……目に見える笑いのかげにひそむ、世人には見えない涙なんてものはありやしない!」
私 「そりゃ、きみ、なんぼなんでも!」(笑い)
シャートフ 「あなたは《穏健なリベラリスト》ですからね」(苦笑い)
こういうのを、ドストエフスキーらしいポリフォニー(多声)と言っていいのかな?
登場人物たちそれぞれが、それぞれに固有でリアルな世界(世界観)を持っている。それらが互いに干渉しあい、ひとつの小説世界が形づくられてゆく。その構造や言葉のリアリティは、たぶんに19世紀的ではあるけれど、21世紀のいま読んでも魅力的であることにかわりない。
ドストエフスキーのファンは、世界中にたくさんいらっしゃる。どうやらわたしも、そのなかのひとりらしい…… この頃、そう思うようになってきた。