安部公房 書籍と参考資料
現在、わたしの手もとにある安部公房に関係した書籍、参考資料をひととおりまとめておこう(そのうち、それぞれの書籍についていくらか詳しく語ってみたい…)。
書籍
安部公房全集 全30巻
新潮社 1997-2009
近藤一弥氏の装幀が素晴らしい(東京ADC原弘賞を受賞)。箱男の箱をモチーフにした外観、見返しには安部公房が撮影した写真が使われているなど、所有することのよろこびを与えてくれます。
全巻の構成がジャンル別ではなく、完全な編年体になっているところが秀逸。小説、戯曲、エッセイ、インタビューなどが、安部公房の思考=創作の足跡そのままに緊密に関係し合っていることがよく分かる。
〈30〉付録のCD-ROMには「全集総目次」や「キーワード検索」があるので便利。「自作を語る」では「新潮社テレホン・サービス」の音声を収録。その他に、初刊本のジャケットやフォトギャラリーで安部公房が撮影した写真を見ることが出来ます。
単行本 文庫本
よく読む作品は文庫本で、単行本もある程度所有。
参考1:『安部公房全集』があればすべての著作が読めるかというと、そうでもない。安部公房は作品の改稿をよくしていたので、初刊本と後年の単行本、雑誌に掲載されたものと単行本におさめられたものでは、ずいぶんと違ってしまっているものがある(全集の基本編集方針としては、初刊本のテキストを収録)。
『終りし道の標べに』『デンドロカカリヤ』『他人の顔』などは、両方のヴァージョンが収録されているけれど「名もなき夜のために」や「鞄」などは、雑誌に掲載されたのものだけが収録されている(改稿後の「名もなき夜のために」は新潮文庫『夢の逃亡』で、「鞄」は新潮文庫『笑う月』で読めます)。
(基本的に作品が読めればよいという考えなので、必要以上に本を集める予定はありません…)。
参考2:単行本『飛ぶ男』に収録されている「飛ぶ男」は、安部真知夫人によって数十個所が加筆訂正され、また原稿の順序も一部が入れ替わっています(より正しい「飛ぶ男」を読みたい方は、図書館などで『安部公房全集〈29〉』の「飛ぶ男」を読むのがよいと思います)。
(霊媒の話より)題未定 安部公房初期短編集
参考資料 書籍
安部公房伝
安部ねり著 新潮社 2011
安部ねりさんは、安部公房の一人娘。父親ゆずりと思われる知的な雰囲気のなかで、いきいきと安部公房が語られている。『安部公房全集』に「贋月報」として入れられていた、ゆかりの人へのインタビューをあわせて収録。装幀が『安部公房全集』と共通しているのがうれしい。
スフィンクスは笑う
安部ヨリミ著 講談社 2012
安部ヨリミさんは、安部公房の母親。24歳のときの作品(彼女が発表した小説はこれひとつだけです)。男女の愛をめぐる物語。
新潮日本文学アルバム 安部公房
新潮社 1994
ボリュームは100ページちょっととやや物足りなくもあるけれど、写真が充実しているので眺めているだけで楽しい一冊。
新潮 2012年12月号
新潮社 2012
最初期小説 「天使」
解説 加藤弘一
11ページ(45×22)ほどの短編小説(22歳のときに書かれた3作目の小説)。天使の国を訪れ天使となった詩人の物語。1947年、23歳頃の安部公房(中折れ帽をかぶったダンディな雰囲気です)と「天使」が執筆されたノートの最初のページを見ることが出来ます。
新潮 1993年4月号 安部公房追悼特集
新潮社 1993
遺稿 「飛ぶ男」
対談 大江健三郎 辻井喬
エッセイ 養老孟司 黛哲朗 島田雅彦 ほか
写真のページでは、箱根の仕事場や真知夫人による安部公房のデスマスクを見ることが出来ます。大江健三郎と辻井喬の対談「真暗な宇宙を飛ぶ一冊の書物」がとてもよい。
へるめす 第46号 安部公房 フロッピー・ディスクの通信
ダ・ヴィンチ解体全書 人気作家の人生と作品VOL.2
リクルート 1997
安部ねり(当時は真能ねり)さんへのインタビューが『安部公房伝』のそれとは違う印象となっていて面白い。親子関係について訊ねられると
私とは、顔を合わせるごとにケンカにつぐケンカでしたね。晩年までずっと(笑)。何かとケチをつけてくるんです。はじめから負けるとわかっている屁理屈のケンカを仕掛けてくる。
との答えが…… (ははは… なんとなく分かる気がする…)愛用のワープロ「文豪」の置かれた書斎のカラー写真が素敵!
参考資料 動画
ETV特集
安部公房が捜しあてた時代
第1回 1993 飛ぶ男 より(1994年4月13日放送)
出演 沼野充義、今福龍太、ヴラスタ・ヴィンケルヘフェロヴァー(在日チェコ共和国大使夫人、世界で初めて安部公房の作品を翻訳した) 巽孝之、久間十義
構成 諏訪敦彦
ETV特集
第1回は、箱根の仕事場を見ることが出来ます(安部公房ワールドがそのまま凝縮されたような仕事場です)。第2回は、安部公房の実弟、井村春光(いむらしゅんこう)さんが兄、公房とすごした旧満州の家を探して訪れます。
ETV特集
1985年1月に放送された「訪問インタビュー」全4回のダイジェスト
第1回「核時代の絶望 なわばりと国家」
第2回「旧満州 青春原風景」
第3回「小説は無限の情報を盛る器」
第4回「前衛であり続けること」
機械好きの安部公房らしく、ワープロやシンセサイザーについて楽しそうに語る場面が印象的です。こちらのインタビューは安部公房全集に収められた「方舟は発進せず」で読むことが出来ます。
※ ビデオテープは動画ファイルに変換して保存しています。
―― † ――
好きな作家の本を、読みたいときにすぐに手にとり読めるというのは、しあわせなことだと思う。
ご案内