鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

夜と虹

遠くに見えた記憶は飛行機雲の軌跡だった眠りの入口で屈折した光が未来への旅を教えてくれたどれほどの愛が夜と虹を巡るのだろう #0142 次回 青空の情景 前回 午後の窓辺

午後の窓辺

午後のテラスで友人に愛の言葉を耳打ちされたつかのま 小さな言葉は青空の大きさになった渡り鳥たちは野辺で美しい生活を夢見ている #0141 次回 夜と虹 前回 VANILLA WALTZ

VANILLA WALTZ

チャイムが鳴って授業が終わった明日の時間割をノートの余白に書き写しておこうあれ? 授業は昼食をはさんで体育ばかり 他の科目は?この学校のこと はじめから好きじゃなかった 外は雨降り 窓から校庭を見下ろした傘を差したまま ふたり人乗りの自転車で下…

レインコート

夕暮れの細い道を歩いていた闇に沈みかけた家は大きな木々に囲まれていた (帰ってきた 帰ってきた) こころが渦を巻いた 玄関の引き戸を開けたただいま 暗がりの奥から ぱたぱたぱたと足音が聞こえてきたレインコートを着た姉の姿が見えた夜には雨が降るの…

静かな時間

静かな時間のなかで考える美しいもの たくさん大切なものたち 丸みに包まれて森の翳りのなかに姿を隠す子供たちは皆 押し黙っている #0138 次回 レインコート 前回 鞄のこと

鞄のこと

わたしとしたことがどうしたことだろう大切な鞄をホテルの部屋に忘れてきてしまったあわてて いま来た道をひき返した 三〇三号室に泊まっていたMですけどそちらに鞄を置き忘れたみたいなんですねこれくらいの大きさのですね はい……小さなガラスのくまさんが…

どこまでも ゆっくりと歩く

朝 目が覚めたときのことだった右足に違和感を覚えたあれ? パジャマのズボンをたくしあげてみた右足の膝から下に包帯がくるくると巻かれているいつ怪我をしてしまったのだろう 心当たりがない おかしなこともあるものねまだ夢のつづきを見ているのかな? そ…

1/6チーズケーキ

真夜中のキッチンの片隅で1/6チーズケーキが 5/6チーズケーキの夢を見る求めていたものたくさん ひとつずつ満たされてゆくなるほど 1/6+5/6→6/6 ということですね6/6チーズケーキには まったく隙がないつまり 60゚×6→360゚ 完全な円は美しいすっと起き上がり …

遠くから きみの名前を呼ぶ

鏡のような湖面に漕ぎ出す白い小舟ふたりの女の子がむかいあって乗っているひとりはすらりと背が高い もうひとりは丸顔オールを漕いでいるのは丸顔の女の子鮮やかに映された青空のなかをすすすとすすんでゆくやがてゆっくりと左右に揺れはじめるすらりとした…

遅れてやってきた小鳥

遅れてやってきた小鳥が落葉のうえで遊ぶ人々の営みのあるところに水蒸気が立ち昇るあの歌声は誰の願いを伝えようとしているのだろうやがて忘却の未来の夕暮れに帰ってゆく #0133 次回 遠くから きみの名前を呼ぶ 前回 物語について

物語について

物語について言葉で語り得る美しい時代はすぎて語り得ない言葉のなかに あなたの姿を見つける #0132 次回 遅れてやってきた小鳥 前回 観覧車

観覧車

ある日の午後 遊園地に出かけたお気に入りの観覧車に乗って街並みを眺めた見下ろした街並みのなかを空想のわたしが歩いていた 古風な家々のあいだを抜ける細い路地の胸が痛くなるような懐かしさを わたしは知っている記憶は閉じている だからもうひとつの道…

雨は降りつづいていた

この雨 いつから降っているのだろう?雨 止みませんねぇ わたしは図書館に出かけたゆるやかにカーブしたアスファルトの坂道をのぼろう丘の頂きに大きな灰色の建物が見えてきた 正面入口は湖のよう これじゃあ入れないや裏口にまわろう 湿ったコンクリートの…

矩形の小さな庭

静かなときのなかで考えるささやかなものたち 大切にしていたものたち たくさんおだやかな光を肩にのせてみる急に悲しくなる どうしてかな? おかしいね 矩形の小さな庭がある その明るさのなかにいる人はいま 何を見ているのだろう色彩たちは小声で語りあっ…

永遠の美しさの庭で

永遠の美しさの庭でわたしたちは話をした ほら いま小鳥が姿をあらわしたどこですか?木々のむこうに隠れた残念……探さなくてもいい またすぐに出会える やがて百年の後もここを訪れたひとがあの小鳥たちの姿を見つけるだろう静かな眼差しのなかに夢はなんど…

落葉

積みかさなる冬の落葉たちそのなかにあるという小さな眠りの王国わたしはいつもみんなから遅れてしまうからここで ひと休み梢を揺らして天使が降りてくる #0127 次回 永遠の美しさの庭で 前回 野道

野道

この道をどこまでも歩いていきたいな冬の光で眺める世界は天使が通りすぎたあとの幻のようだねきみの声に小さく肯いた夢が終わるところから虹がはじまるんだって渡り鳥たちは枯れ草のなかで羽を休めている美しいもの まだ たくさんあるよ #0126 次回 落葉 前…

少し暗い部屋

少し暗い部屋沈んでゆく色彩のなかを時が泳ぎはじめるいつかどこかに置き忘れた記憶たちとの語らい本箱の隅に小さな愛が姿を隠している気がした紅茶を入れてホットケーキを食べたギターの音楽を聴く毛布にくるまり長椅子のうえで眠る目覚めたら あとひとつな…

冬の夜を一編の詩が飛んでいるそれは悦びの歌のようでもあり そこはかとない哀しみの音韻のようでもある 雪はせつせつと降っている息と声は予感するきみたちは なにを求めていますか?やがて空と白の彼方にみな消えていった #0124 次回 少し暗い部屋 前回 き…

きみの大切にしていたものすべて

もっとも甘美な歌声は もっとも遠くから響いてくる夜の静けさを友に招こう! 記憶の庭は淡い光にみたされてわたしはひとり言葉と戯れる #0123 次回 雪 前回 真夜中には

真夜中には

真夜中には愛すべきものがたくさんあるちょっと出かけてきますね 冬の公園を訪れた読書をするなら 青白い光の街灯の下がよい背中を丸めてお気に入りの本を開こう なくしたものすべてここにある誰にも見つけられなかった だからわたしが見つけた誰もが思い思…

窓辺はふじ色の闇

窓辺はふじ色の闇暗さは距離を曖昧にしてくれるから好きなんだソファは空席 きみの不在をぼくは推し量る 幾星霜集められた記憶の断片は標本箱の蝶のようだね小さな部屋から遠くを眺める硫酸紙のように きみの夜へとこころが透けてゆく #0121 次回 真夜中には…

家の記憶

小鳥の囀り くすくす笑い 柱時計が時を刻む音暗い廊下から ぼくたちは「光の庭」を眺める (ほら きみの家の記憶を物語ってごらんよ) 永遠を授けられた名前を持たない花たち水晶のように硬く透きとおって世界から熱を奪ってゆくすべては純白の壁面に飾られ…

監獄

希望の森の奥深く、翼竜の巨大な卵の殻でつくられた監獄。 独房には竹箒のような女がひとり、兎の骨で寒さをしのぐカーディガンを編んでいた。雨の日には正座をして看守の靴音を指折り数えるという。女の刑罰については、なにひとつ分からない。 ある日の午…

灰色の空

垂直に落下する雨の軌跡のように立っていたなにかを問いかけるよりはやく世界はすぎてゆく やわらかな土が好きだったそこにある不安や混沌も やがておおらかな時間のなかに消えてゆくだろう #0118 次回 監獄 前回 真夜中の出来事だった

真夜中の出来事だった

真夜中の出来事だった事故現場は駅近くの丁字路白のセダンが電柱に衝突していた薄い紙がするりと床に落ちる音を聞いたどこからともなく物静かな救急隊がやって来た整った隊列をつくると怪我人三名を素早く担架に乗せた (なにも特別なことじゃない) 乱雑に…

生の作法

静かな時間だった搏動する深紅が生命を歌うやわらかで温かなものは素晴らしいなんの疑いもなく それが生の作法であるかのようにわたしたちは空想湿原を歩く #0116 次回 真夜中の出来事だった 前回 この世界のこと

この世界のこと

すべては空想なんですねあなただって このわたしだって誰もそのことに気がついていないなんて不思議ですね思い描いた場所にみんな帰ってゆこうとする 世界は知っていた わたしたちは知らなかった大切な記憶は夕暮れどきの影のように長く伸びてゆくやがて夜の…

森と祈り

夕暮れに森の小径を歩くいまを静かに生きている木々たちを素敵に思ういくつもの聞いてほしい言葉があったあの頃の思い出を連れ添ってこころが渦を巻いた濃い緑のなかに立ち止まるキイチゴの赤にわたしを見たのはいつのことだろう?ありのまま世界を享受する…

夜の言葉たち

夜を歩く言葉たち 列を組んで街路をゆく沈黙は待ちつづけることの無垢な時間だったそこに隠された声をわたしは知っている いま 風が吹き抜けてゆく光の粒子に包まれた天使たちが歌うように夜空を飛んでゆく #0113 次回 森と祈り 前回 語ることには愛がある

鞠十月堂