鞠十月堂

詩と文学と日記のブログ

語ることには愛がある

語ることには愛がある青空を流れてゆく大きな雲よどこまでゆきますか?わたしも一緒に連れて行って下さいますか? 行き惑う孤独な言葉たちよふるい民家の古風な翳りのなかになにを見つけますか?そこにある真実の明るさはどれほどですか? #0112 次回 夜の言…

雨が上がるように

雨が上がるように わたしの人生が終わる 大気は親密だった暗い空が夜の気配を呑み込んでゆく窓から差し出した手が冷たく濡れた 雨は降りつづき わたしの人生も終わらなかった #0111 次回 語ることには愛がある 前回 詩と言葉

詩と言葉

単純で数少ない言葉たち (イメージはどこに?) 薄暗い路地裏にも似た意識とヴィジョンの隙間をすすす と足早に通りすぎてゆく誤りなくその軌跡を書きとめることは意外にむつかしい (まあ 仕方ない 残りは空想で補っておこう) #0110 次回 雨が上がるよう…

憂愁の予兆

憂愁の予兆のようだったどよめきと笑い声が遠くに聞こえた楽団の奏でる音楽は軽快だった子供たちはみんな輪になって踊っていた暗がりに設営されたテントに純粋な愛があるという偽りの楽園だった 言葉は薄い羽根をふるわせて宙を泳いでいた眼差しは何を見つけ…

夜の森

泉から溢れる水は言葉と夜をつれて森を流れたわたしは小径を歩き月と戯れた 落葉の匂いがするよ 記憶とやさしさが姉妹のように寄り添っていたあの頃の息を潜めた〈暗い生〉をわたしは知っている 不安に沈んでゆく木々のざわめきをくすくすと笑った精霊よ! …

希望のおもみで

希望のおもみで 美しいものたちはみな頽れてしまった蒼白い光のなかの悲しみの音節たち 散り散りになって誰がきみたちにかわって夢を見るのだろう?未来に静止した明日のために言葉たちが落ちてゆく黎明の色をぼくは知っている #0107 次回 夜の森 前回 金木犀

金木犀

金木犀の香りが十月を知らせてくれた窓辺の椅子に腰掛けて お気に入りの本のページを開く一列に並んだ素朴な言葉たちを指先でなぞって遊ぶ #0106 次回 希望のおもみで 前回 秋桜

秋桜

美の只中に落ちてしまったのかなぼくたちの廃墟に いま秋桜が咲くよきみ あのときの涙の跡を覚えていますか? #0105 次回 金木犀 前回 プリズムを抜けてきた言葉たち

プリズムを抜けてきた言葉たち

プリズムを抜けてきた言葉たち光の反射-屈折-分散 でも ちがうんだなああの日 ぼくたちは丘の上で虹の言葉を待っていたんだ嵐のように物語を駆け抜けたら あといくつ橋を渡ればいい?夢の平原を跳ねまわる子鹿の姿を思い描いてごらんよ目覚める直前まで誰…

空の青

ロシアンルーレットのような愛の言葉その閃光で きみの空の青を撃つ #0103 次回 プリズムを抜けてきた言葉たち 前回 そうして彼女は語った

そうして彼女は語った

そうして彼女は語ったわたしは彼女が語るのを聞いたためらいがちに選ばれた言葉たち発声 息継ぎ 小さな沈黙いま彼女の喉を温かな息が昇ってゆく 一艘の小舟が沖に漕ぎだすように彼女は〈愛〉について語った彼女は〈愛〉についてなにも語らなかった言葉たちは…

朝靄

魂には形もなければ色もない でも姿がある誰もが知っている だから誰も語らなかった光が夢見る朝靄のなかで美と魂はひとつだった #0101 次回 そうして彼女は語った 前回 ぼくたちを乗せた船が

ぼくたちを乗せた船が

ぼくたちを乗せた船が いま沈んでゆく夢が終わるように ではなく夢などそのはじめからなかったかのように 誰の声? 波の音?それは大海原との絆のように ぼくたちに用意された幸福な悲しみだったのか 海鳥たちよ! 水夫は沈んでゆく船に最後まで残り生命の擾…

大切な日を

大切な日を明日に結びつけるおだやかなこころで世界の鼓動を聴いた繰り返される記憶は夜の大気に憩うやさしさだったわたしは静かに息をする眠りの入口で小さな自己愛を見つける #0099 次回 ぼくたちを乗せた船が 前回 ある朝のこと

ある朝のこと

ある朝のこと空の雲の切れ間から糸になった太陽がわたしのもとへ降りてきた するするする夢見るように細く繊細な光の糸だったこれはいかなる奇跡? 光の糸を手にとったほつれたところをつまんで引っ張るとあら不思議! 二本にほどけた片方を左の手首に巻きつ…

ここに絶望がある

ここに絶望があるそれはまったく動かしようがないここにわたしの正しさがあるそれもまったく動かしようがない こころは巡り こころは帰ってくるわたしという円環がひとり歌を歌う悲しみが立ち現れてくるその瞬間にもおおらかな日差はなにひとつ迷うことなく…

美と哲学

岬の先端には美と哲学があったそのひとは明るく語った 簡単なことなのさ 美には哲学が必要なのさ美はいつだって哲学のことを求めて止まないのさ美は哲学のようでありたいと秘かに思っているのさ つないだ手は温かだった 古風な薔薇の匂いだったからだは小刻…

子供の遊び

ふたりで高い塔の窓辺にいたからだは窓から突き出たいっぽんの棒のようだったあやうい均衡にこころがよろこんだ (届くかなあ…… 届くかなあ……) 青空にむかって ひとしきり手を伸ばした薔薇の香りがふたりのあいだをすり抜けていったそのときつかもうとして…

犬のこと

真四角の真っ白い部屋だった丸められた毛布の上に犬が眠っていた栗色の毛並みに小さな幸せを見つけた (ごきげんいかが?) 声をかけると犬は目を覚ましたきみの大きくて黒い瞳が好き!わたしが部屋の扉を開けるとついてきた隣の部屋も真っ白い部屋だった (…

鉱石のような時間のなかにいた

鉱石のような時間のなかにいた梢が揺れて さわさわさわ と声たちが散らばってゆくそこからひとつの言葉を聞き分けることはもう出来ないけれどもの悲しい? こころ楽しい? それとも……夏の青空のもとで野の花を摘む #0093 次回 犬のこと 前回 遠くに見えるも…

遠くに見えるものには

遠くに見えるものには愛がある情景の片隅にぽつんと置かれた小さな永遠 子供たちが言葉の影を踏む 愛という言葉にも影がある遊びの時間はまだ終わらない #0092 次回 鉱石のような時間のなかにいた 前回 ベルベット

ベルベット

夕暮れがわたしを置き忘れてしまったのだと思った孤独に暮らすための部屋をわたしはいくつも持っていた手にした鍵の束が冷たく澄んだ音色を響かせた 窓辺にひとり立っていた ドレスの裾を指先でつまんだあの日の裏切りをベルベットは律儀にも憶えていてくれ…

夏と記憶

夏に秋の星座を夢見る鯨たち巨大な群れは〈美〉の気配にむかって泳いでいた (水 平 線 ニ 明 ル イ 色 ヲ 見 ツ ケ タ ヨ) 幻想には終わりがない 葡萄棚の下を歩くかいま見た未来が記憶の辺土に埋もれてゆく水晶のような硬さのなかに沈んでゆく #0090 次回…

夜の記憶

あれは いつの日のこと?夜のプラットホームと〈いま〉を往復する暗い風景がわたしだった 静かに待っているわたしたちが それから列車も 記憶は回帰しようとしてる でも見失ってしまう永遠が〈止まれ〉の標識のように立っているすべては停止している #0089 …

夢のこと

いつも見る夢だったショベルで掘られた大きな矩形の水たまり揺れ動いている光 浮き草たち水辺のふちを歩く (ここに わたしの人生をみつける) あの日に出会うことのなかったものたちは沈んだ青色をした壁面に姿をかえていたわたしは手を触れる みんな近くに…

人生と夢

物語を見失ったそれは人生を失うことに似ている 夢を見た 光景は鮮やかだったわたしは元気に歩いていた (知っている! 知っている!) 言葉より以前に おおらかな悲しみがあった夢見ることの記憶がわたしだった #0087 次回 夢のこと 前回 夜の眠りの入口で

夜の眠りの入口で

夜の眠りの入口でわたしの手ともうひとつの手がふれあった温もりは霧にかすむネオンサインの淡い色だった真珠のように丸くなった息が傾斜を転がり落ちる夢の地図に爪の先で小さなしるしをつける #0086 次回 人生と夢 前回 今宵もワルツを

今宵もワルツを

涙を誘う悲劇のように見えていたものはなに?音程を外して演奏される憂愁のワルツを聴いたよ音楽はいつも わたしたちのすぐ近くで鳴り響くこんな時代にも 愛を求めるひとの営みがある #0085 次回 夜の眠りの入口で 前回 わたしの詩作は

わたしの詩作は

わたしの詩作はまだまだだなぁ とよく思うどうにも軽快じゃない なにやらもたもたしている出来ることなら すすっと十一歩くらいで星空の彼方にまで届く詩をつくりたいんだ 通り雨は空の雲から降ってくるけれど詩の言葉たちは見知らぬ星たちのあいだを縫って…

六月の太陽

お昼寝から目覚めて散歩に出かけた世界は思わず笑ってしまうくらいに明るかった草の匂い 川の流れ 遠い記憶悲しみのひと粒が六月の太陽を飾ったこの青空の高さに愛の姿を探してみよう #0083 次回 わたしの詩作は 前回 夜になったきみのこと

鞠十月堂